翌日から兄夫婦は農作業に自転車で行くようになりました。私も家事や農作業を手伝っていました。街で焼けだされた難民みたいな人があちこちで目立つようになってきました。彼らも農作業を手伝ったりして、その報酬として食料をもらっていました。
彼らは口をそろえて、「街はもうだめだ」と言いました。電気製品や交通機関がいっぺんに故障し、街の機能は麻痺し各地で火事や事故が発生し、まるで戦争のようだったとの話でした。
私はもう東京に戻るのを、そして自分の仕事をあきらめていました。このころになると私の心にも余裕ができはじめて、この事件はいったいなんだったのか、と考える余裕ができはじめていました。「戦争かもしれない」とも思いましたが、私はコンピュータ技術者でもあったため、これはコンピュータウイルスの仕業ではないかと思いはじめていました。実際私のパソコンが異常動作を起こしたのと、すべての電気製品が止まったのは同じ時刻でした。この当時の電気製品はたいていプログラムで動いていましたから、それらが同じウイルスに感染していて、ある時刻がきたタイミングで一気に起動したということではないか？ほぼ確信に近いものがありました。
そうするとこれをつくったのはいったい誰か？どこかの組織がつくった情報兵器とも考えられました。実際このおかげで日本は壊滅状態でしたから。ただの愉快犯とも十分考えられました。
ここまできて私は、はたと気がつきました。ＯＳＹ自体が何か問題あったんでは？もちろんコンピュータウイルスが原因とも考えられましたが、抗ウイルスソフトがこれだけ開発されている世の中で、これだけ強力に効くウイルスというのはどうも考えづらかったのです。また、ウイルスソフトの作成者は重い刑罰が課せられることになっていたからです。
1999/02/05 wrote